お歯黒ってなに?
先日休みを使い京都に行ってきました。
一時期に比べるとだいぶ人出も戻り、観光地らしい賑わいを取り戻していました。
京都といったら舞妓さんが有名ですが、昔の舞妓さんの写真や絵を見ると歯が真っ黒に写っています。
今日は昔の風習であったお歯黒の話をしてみたいと思います。
お歯黒とは
お歯黒とは、名前の通り歯を黒く染めることを言います。
「鉄漿」「かね」「涅歯」などとも呼ばれ、明治時代の初期まで、主に女性の間で続いていました。
お歯黒の歴史は古く、はじまりは平安時代から使用されていたそうです。
当初は主に貴族階級のあいだで使用されており、一般庶民には普及していませんでした。
男女ともに17~18歳なると歯を黒く染め、成人の証としていたそうです。
時代とともにだんだんと染めはじめる年齢が低くなり、室町時代には13~14歳に、戦国時代になると早い人では8歳くらいで染めている人もいたそうです。
その後江戸時代になると次第に一般庶民にもお歯黒の文化が普及しはじめます。
一般庶民に普及するに従い徐々にお歯黒の目的も変わり、男女の成人の証であったお歯黒はいつしか女性が婚約・結婚を迎えた際に染める、既婚女性の象徴として使用されるようになりました。
お歯黒の成分
お歯黒は鉄漿水と呼ばれる酢酸に鉄を溶かした液体が主成分となっています。
この鉄漿水を歯に塗り、さらに五倍子粉と呼ばれるタンニンを多く含む粉を上から塗っていきます。
こうして鉄漿水と五倍子粉を交互に塗り重ねていくことで、徐々に鉄漿水に含まれている酢酸第一鉄がタンニン酸とくっついて歯が黒く変色していくのです。
お歯黒の効果
お歯黒には見た目の影響だけではなく、虫歯の予防にも効果がありました。
お墓などから出てきたお歯黒の施された歯には虫歯の痕跡が全くなかったそうです。
なぜでしょうか。
それはお歯黒に含まれている成分に答えがあります。
お歯黒に含まれているタンニンには、タンパク質を凝固・収斂させて細菌から歯や歯肉を守ったり、知覚を鈍麻させる作用があります。
第一鉄イオンは、エナメル質のハイドロキシアパタイトに作用して耐酸性を向上し、歯質を強化します。
さらに第一鉄イオンとタンニン同士が変性し結合するとタンニン酸第二鉄という物質になり、これが歯の表面を覆うことで細菌が歯に接触できなくなります。
つまりお歯黒には
1. 虫歯になりにくくする
2. 虫歯の進行を抑制する
3. 知覚を鈍化させる
といった効果があるのです。
こういった効果からお歯黒の施された方には虫歯が出来ず、「お歯黒の女性に歯医者はいらない」とも言い伝えられていました。
お歯黒の歴史はいつまで続いた?
お歯黒の風習は明治時代になって、チョンマゲや帯刀とともに禁止となりました。
その後大正時代にはお歯黒をしている人はほぼいなくなっています。
今でもこのお歯黒の虫歯予防効果を応用したフッ化ジアミン銀というものもありますが、歯が黒くなってしまうためあまり積極的には使用されていません。
いつの時代かまた黒い歯が流行る日も来るのではないかとも思っていますが、今は黒い歯よりも白く輝く歯が美しいとされています。
当院でもホワイトニングやセラミック、歯のマニキュアなど、歯を白くするメニューは充実しております。
ご興味のある方はいつでもご連絡ください。